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桜が咲く頃逢えたら
第7章 桜咲く中、突然の別離
「みーちゃん、強いな」と、江川さんが驚いて私の顔を見た。

亮平さんは、涙ぐみながら私を抱き締めて背中を撫でてくれる。

そんな中、私は震えながら泣いていた。


「瑞樹、りんの為にありがとう」と、
亮平さんが言った。


りんくんの骨はとても小さくて、
そして治療の為なのかすごく脆くて、
なんとか拾っていった。


亮平さんと私。
亮平さんのお母様と江川さん。


4人とも、静かに、
丁寧に拾っていった。


「次は49日で。
納骨もその時に…」と、僧侶お2人が帰るのをお見送りして、
お母様もタクシーに乗せた。


「瑞樹さん、ゆっくり家にもいらしてね?」と手を握ってくださったけど、
お母様の手はとても小さくて冷たかったので、
私は思わず両手で握り返してしまった。



「送って行くよ」と江川さんに言われて、
亮平さんと2人、後部座席に座る。
亮平さんの膝の上には、
小さくなったりんくんが抱き抱えられていた。


「どっちに送っていけば良い?」
と訊かれて、
亮平さんが、
「俺の部屋で。
瑞樹も来てくれる?」と言うので、
そっと頷いた。


車の外は、少しだけ春めいた空になっていたけど、
桜の季節には早いようだった。

途中、1本だけ、
くっきりと桜が満開になっている樹を見たような気がして、
ハッとしてしまった。

色が濃いように感じたので、
河津桜の仲間なのかもしれない。



夜、急いで向かうことが多くて気づいてなかったけど、
亮平さんのマンションの近くにもお寺があって、
外から見える処に河津桜のような樹が、小さいながらも満開になっていた。


りんくん、お花なんて好きじゃなかったのかな?
と思いながら、
納骨まで、お花やご飯を用意してあげたいと思った。



部屋に入って、空気を入れ替えてから、
りんくんの場所を作ってあげる。


亮平さんはぼんやりした顔で、ベッドに座っていた。


亮平さんにはコーヒーを淹れて、
私は病院の売店で買ったココアを2つ淹れて、
りんくんの前にそっと置いてから、
少し冷めるのを待って飲んだ。


「瑞樹、本当にありがとうな。
りん、最期に瑞樹に会えて、
喜んでたよ」と言うと、
私を抱き締めて泣いた。



その時、突然、私の携帯が鳴った。
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