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第18章 分岐点

「だって私、レイプされたのよ！
見知らぬ男に挿入されて
中だしまでされたのよ！」

加菜恵の腕から逃れようと
咲希は暴れた。

「そやから、そんなんは事故やと言ってるねん！
幸いにもこの事を知ってるんは、
うちとこの男と部長だけや
黙っとったら誰も知らんわ」


それにな、と
加菜恵は咲希の耳に口を寄せて

「うち、黙っとったけど
風俗で働いてんねん…
毎晩、いろんな男に抱かれてるけど
心まで抱かれてへん
あんたもそうやろ？心まで抱かれてへんやろ？」

心まで抱かれていない…

その一言で咲希は暴れるのをやめた。

加菜恵は大槻の方を振り返り、

「この男はな
何もかも承知でここに飛び込んできたんや
あんたの全てを受け入れるつもりやと思うで」

咲希に言い聞かすと言うよりも
大槻に念を押すかのようにそう言った。

その言葉を継ぐように
大槻も

「僕は全てを受け入れるよ
犬に噛まれたと思ったらいい」

大槻も咲希に近づいて後ろから優しく抱きしめた。

「大槻さん…」

もう私の役目はここまでだと
加菜恵は咲希を抱きしめるのを
大槻にバトンタッチして体を離した。

『これでええわ
咲希はこの男と一緒になったらええねん
これで武郎さまは私だけのもんになったわ』

二人を残して
加菜恵はソッと部屋を抜け出した。