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第29章 社内での情事

相手の担当者も立花の軽快な話術に
すっかりと気に入って
商談はあっという間に締結した。


帰りのタクシーの車内では
立花はすっかりとご機嫌モードだった。

そして、その饒舌が最高潮に達すると
「本部長、俺、今度結婚しようと思うんです」と
話し始めた。

「そうかい？それはおめでとう
で…相手はどんな人だい？」

「本部長も一度会ってますよ
クラブ深海魚の佐智子というホステスです」

「えっ？」

今朝、佐智子を抱いたときには
そんなことを全然言っていなかったが…

「付き合って長いのかい？」

「いえ…実は今夜、
交際を申し込むつもりなんです」

おいおい…
そういう段階で結婚も何もないだろう。

「ボディタッチしても満更じゃなさそうだし
きっと彼女も俺との交際を待っていると思うんですよね」

「仕事上の社交辞令じゃないのかい」

「そんなことはないですよ！
彼女のために大好きだというティファニーのリングも用意したし、絶対に受け入れてくれると信じてます！！」

話ながら興奮してきたのか
やけに鼻息が荒くなってきた。

『佐智子と俺がデキてると知ったら
こいつ発狂するかもな…』

心の中でクスクスと笑いながら

「水商売の女にだけは気を付けろよ」と
当たり障りのない言葉で
立花に釘を刺した。