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調教物語~ある男の性癖~
第31章 再生の時
武郎は裕美子の部屋を飛び出してから
野宿などを続けて、
ひと月ばかりフラフラと
大阪のあちらこちらを歩いた。
ふと気づくと大きな公園に
ブルーシートで囲った浮浪者のテント群を見た。
『俺もそろそろドロップアウトして
あの人たちの仲間入りするか…』
社会復帰するつもりはなかった。
財布に金が残っているうちに
ブルーシートでも買っておくかな…
近くに工具などの大型店舗はあるだろうか?
まあ、こうして歩いていれば
そのうち見つける事が出来るだろう…
街をさまよっていると
どこからともなく出汁のいい匂いがしてきた。
「最後の晩餐と洒落こむかな」
そのいい匂いを流していたのは
一軒の小さな大衆食堂だった。
ここなら薄汚れた俺でも追い出されないかな
武郎は思いきって食堂の暖簾をくぐった。
「はい!いらっしゃいませ~!」
厨房で一人の女がこちらに背を向けて
調理をしていた。
夕方の客たちに備えて
大皿料理をこしらえているようだ。
武郎は女の背に向かって
「きつねうどんをお願いします」と声をかけた。
「はい~!きつねうどん一丁ね!」
バイタリティーのある声だった。
『はて?どこかで聞いたことのある声だな…』
しかし、女の声なんて
誰もかれも似たり寄ったりだろうと
武郎は記憶を手繰るのをやめた。