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調教物語~ある男の性癖~
第31章 再生の時

「いいえ、転勤先は名古屋だったんですけどね」

薫は武郎の向かいの席に「どっこらしょ」と
腰を降ろした。

「転勤してすぐよぉ、旦那に女ができちまってね
トントン拍子で離婚まっしぐらよ」

そう言って薫は
武郎がその話の先を促していないのに
どんどんと語り始めた。

「慰謝料、たっぷりとぶんどってやったわよ
そのお金を元手にこの店を開いたんだけどね」

武郎は何気なく
店内を見渡した。

「あ、小汚ない店だけど
流行ってるのよ~、
週末には娘に帰ってきてもらって
手伝ってもらわなきゃいけないぐらいなんだから」

来年早々にも
店舗を改装するつもりなのだそうだ。


「それにしても…
あんた、ひどい身なりねえ…」

そう言われて「臭いますか?」と
腕を上げて腋をクンクンと嗅いでみた。

自分でもイヤになるほどの悪臭が鼻に飛び込んだ。

「まあ、理由(わけ)は聞かないけど…
とりあえず風呂に入んなさい
今すぐ沸かしてあげるから」

武郎は固辞したが
「私が筆下ろしをしたんだからね
女を覚えさせた私の言うことはききなさい」と
半ば無理やりに風呂に入れられることになった。

「風呂に入っている間に
着替えを買ってきてあげるわね」

元来、世話焼き女房タイプなのだろう。
恐縮する武郎に「いいから、いいから」と
薫は自転車に飛び乗って出ていった。



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