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サトシのHなエッセイ
第31章 なぁ、ええやろ?③
「ええんかぁ?
 大分、感じとるみたいやなぁ
 最後に・・・ぐりっと・・・・」

「だめだめっ・・・ああああっー・・・・」

逆の方の耳掃除は、さっき以上の快感を伴って終了した。
膝の上で顔の向きを変えたので、必然的にヤツのお腹にすり寄る姿勢だった。

ヤツの体臭と汗の匂いが、嫌なのに・・・何故か。
耳かきでグリグリされている最中、ずっとヤツの腰を抱きしめていた。

(ああ、何だか・・・)
安心するのだ。

私は終わったのが気づかないふりをして、ヤツの腰をギュッとしたままでいた。
このまま、そう、このまま・・・ヤツの温もりに包まれていたかった。

「フフ・・・」
ヤツの笑い声、今は勝ち誇った顔を見たくない。

「かいらしい(可愛い)なぁ・・・」
ヤツのゴツゴツした手が頭を撫でてくる。

ヤバい。
胸がキュンとなって、ゴロゴロと猫みたいに甘えたくなった。

(でも、ダメよ・・・)
私は自分に言い聞かせるように、心の中で呟いた。

コイツは「腐れジジイ」なのだ。
自分の父親程、歳も離れているし、イケメンでもない。

私は決心したように、顔をヤツに向けた。
ヤツの優しい笑顔に負けそうになるけど、無理に表情を硬くして声を絞り出した。

「あ、ありがとう・・・
 じゃあ、また、こんど・・・」

頭を撫でるヤツの手をどけ、立ち上がろうとした瞬間、強い力で膝に戻された。

「キャッ・・・・」
少女のような声を出してしまった、また、ヤツにからかわれる。

「あほっ・・・」
そんな私の想いを打ち砕くかのように、短い叱り声が響いた。

「えっ・・・?」
ヤツを見上げる私の表情はきっと、戸惑いに震えているのかもしれない。

「ホンマに耳掃除だけで・・・帰るんか?」
ヤバい、真剣な目になっている。

「そ、そんなこと言って・・・
 どうせ、また・・・」

私はジジイの視線を、はぐらかす様に目をそらしながら呟いた。

「しょうもないオチ・・・
 三回目は嫌だからね・・・」

ヤバい、何か、目が潤んできてる。

「例えば、マジックの蓋が抜けた~・・・
 的な・・・か?」

また、優しい笑顔に戻って私のオデコの髪をかき上げてくる。

「ばか・・・・」
溢れた涙のせいで、呟きが途切れてしまった。

もう一度、言い直そうと涙を拭って口を開こうとした瞬間。
私の言葉は、ヤツの唇で塞がれてしまった。

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