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Start Over Again
第3章 契約書

ワンフロアには10部屋ずつあり、1基だけだと不便ということでエレベーターは2基あるとのこと。
つまり、203号室前と208号室前に到着するようになっている。

私の新居は210号室。

208号室側に到着するエレベーターに乗り込み、階数ボタンを押してくれる健介くんの後ろからちらりと見ると、1から30までの数字のボタンがあった。
どうやらこのマンションは30階まであるようだ。

内見のときは階数まで確認する余裕がなかったんだよなぁ。と緊張していたことを思い出していると到着音が鳴り、扉が開いた。

鍵を持ってくれている健介くん、咲子、私、朔ちゃんの順にエレベーターを降りるとすぐ目の前に208号室。

右側に進んでいく健介くんについていき209号室の前を通り過ぎようとしたとき、後ろにいる朔ちゃんが「はっ!?」と大声を出した。

私は驚いて足を止めたが、先に玄関前に到着していた咲子と健介くんは一瞬こっちを見ただけ。

「どうしたの?」と聞くと
「け、けいちゃんの部屋って…209号室じゃなくて、まさか210号室!?」と焦った様子で返してくる朔ちゃん。

「う、うん。210号室だよ…」
と答えると、ピィーという解錠音が聞こえた。

玄関のドアを支えてくれながら健介くんが「お姉さん、どうぞ」と待ってくれているが、なぜか隣にいる朔ちゃんが私の手首を掴んでいて動けない。

「朔ちゃん?」と名前を呼ぶけど、考え事をしているのかソワソワしていてそれどころじゃなさそうな様子。

「ちょっと、朔!」
咲子が名前を呼ぶと、朔ちゃんはビクッとして動きを止める。

「そんなとこに突っ立ってても近所迷惑になるだけでしょ。早く入りなさい」
いつもより低めの声でそう言って先に部屋に入っていく咲子。

返事はせずに、代わりにため息を吐いた朔ちゃんは
「け、けいちゃん。えっと…僕も混乱してるんだけど、なんて言ったらいいか……でも先に謝っとくね……ごめん!!」
と申し訳なさそうに眉を下げてうつむき、何に対しての謝罪なのかよくわかっていない私の手首を引いて歩き出す。

え…なになになに。
まさか私、ここに住めないとか…?
いやでも荷物は運び終わってるみたいだし…
えっ、どゆこと? なにごとっ!?

朔ちゃんの態度に混乱しつつ、私は引っぱられながら210号室へ入室した。

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