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Start Over Again
第5章 飲み会
朔ちゃんの『覚悟しててね?』発言から1週間。
どう覚悟しておけばわからないまま、隙あらば手を繋いできたり…抱きついてきたり…頬にキスしてきたり…と、付き合いたてのカップルのようなスキンシップをしてくる朔ちゃんにやや慣れてきた頃、職場の先輩の幸田さんから飲みに誘われた。
接客業で働いていると同期や先輩ともなかなか都合が合わず滅多に飲みに行けないけど、プライベートでの人付き合いが苦手な私には逆に好都合で。
それでも幸田さんには新人の頃からお世話になっているし気を許せる先輩でもあり、行きます! と詳細を確認せず返事をした。
それを今、とても後悔している。
指定された日時に集合場所に到着した私の視界に入ってきたのは…見覚えのある顔と、見知らぬ顔たち。
ど、どうしよう。気づかれる前に帰るか…?
そろーり、そろーり、と後ずさりしてその場を離れようとすると背中が何かにぶつかった。
「うっ!? あ…すみませ…」
慌てて振り返ると、これまた見覚えのある顔。
「なにしてんの?」
無表情のまま私を見おろすのは同期の須藤さん。
同期だが、年齢は私のひとつ上なので先輩という認識だ。
「お…疲れさまです。何もしていません」
背が高く体も大きいため、それだけで威圧感があるのに、加えて無表情なことが多いから私の中ではちょっと怖い人…という印象だ。
そんな人に、帰ろうとしていました。なんて言えるわけもなく、とりあえず挨拶してからごまかすと
「後ろ歩きしてなかった?」と直球にたずねられた。
ドギマギしながらも「いいえ、していません」と答えると
「ふーん…」と言いながらじぃーっと見つめられる。
須藤さん、たまにこうやってじぃーっと見つめてくるけど、なんなんだろう…?
蛇に睨まれた蛙…とまではいかないけれど、須藤さんに無表情で見つめられるとどうしたらいいのかわからず、逃げ方もわからず、とりあえずゆっくり視線をそらす。
何か話題…と考えていると集合場所のほうから「山之内~」と名前を呼ばれた。
振り返って声の主を確認してホッとする。
「お疲れ~」
手を上げながら愛想良く近寄ってきたのは、これまた同期の橋本くん。