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Start Over Again
第5章 飲み会
振り返ると、すぐ後ろに朔ちゃんがいた。
はぁはぁと肩で息をして少し汗をかいている。
「朔ちゃん…走ってきたの?」
バッグからハンカチを取り出して額や首の汗を拭いてあげると、少しムッとした顔で私を見る。
「どうして店の外にいるの?」
「ああ…今ちょうど先輩たちを見送ってたから。これから中に入ろうと思ってたんだけど…」
正直に言うと「ふーん…」とつぶやいたあと朔ちゃんは橋本くんと須藤さんへ目を向けて「こんばんは」と会釈した。
橋本くんと須藤さんも「こんばんは」と会釈をする。
それを見て二人をほったらかしにしていたことを思い出す。
「あ、すみません。私はこの子と帰るので、お二人も気をつけて帰ってください」
焦ってそう言うと須藤さんは黙ったままうなずいて、橋本くんはにこっと微笑む。
「山之内も気をつけて。じゃ、ダブルデート楽しみにしてるわ。お疲れ~」
ちょっ…!
手をひらひらさせて橋本くんは須藤さんと共に駅のほうへスタスタと歩いていく。
ぜったい、わざとだ。
今あえてダブルデートって単語出したな…。
「…私たちも帰ろっか」
ため息を吐いて、頑張って口角を上げて朔ちゃんへ顔を向けると、眉を吊り上げた顔が目の前に。
「ダブルデートってなに」
「えっ…と…」
「もしかして、あの二人と?」
「う…ん」
「何でそんな話になったの」
「私もよくわかんないんだけど…」
怒ってる様子ではあるけど、口調は冷静な朔ちゃんにおおまかに経緯を話すと、盛大なため息。
「…今の話からして、けいちゃんは別にあの二人のどちらかを好きってわけじゃないんだよね?」
「う、うん」
コクコクとうなずく私を見て朔ちゃんはため息を吐いて「まぁそれなら…」と言って私の手を取り歩き出す。
「とりあえず、帰ろ。車で来たから」
「車で来てくれたの?」
「うん。飲み過ぎてないにしても歩くよりはラクかなと思って」
「そっか。ありがとう…」
朔ちゃんの思いやりのある言動に感動しながらついていくと、しばらくしてパーキングに到着し、助手席に乗せられた。
精算を済ませて戻ってきた朔ちゃんが運転席に乗り込むのを黙って見つめてると、視線に気づいた朔ちゃんがふっと表情をやわらげる。
だけど、何も言わずに車を発進させた。