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Start Over Again
第5章 飲み会
須藤さんと橋本くんが私を凝視する。
その目は期待に満ちていて、まるで断るほうが悪者にされそうな空気。
「わかりました。しましょう、ダブルデート」
とため息混じりに了承すると
「ありがとう。助かるよ」と須藤さんが微笑んだ。
え!!!
どんなときも無表情な須藤さんが微笑んだ!!?
驚きのあまり言葉が出ずに橋本くんへ目を向けると、驚いたというよりなんだか悲しそうな表情をしていた。
こちらもこちらでめずらしい。
何でそんな顔するんだろう? と見つめていると視線に気づいた橋本くんがハッとして、いつもどおりの顔で笑う。
「では、詳細はおいおい決めましょうか。幸田さんたちもやっと出てきたし、今日はこの辺で解散しましょう」
「そうだな」
「そうですね」
橋本くんの言葉に須藤さんといっしょにうなずく。
ざわざわし始めた店のほうへ振り返ると、幸田さんたちがぞろぞろと出てくるところだった。
三人で幸田さんのほうへ近づくと
「二次会行く人はこっちー」
「帰宅する人はこっちー」と二次会組と、帰宅組で分けられていた。
私たち三人は揃って帰宅組にまざる。
こんな風に、こちらが二次会への参加を断る前に、参加は強制じゃないよー来なくても大丈夫よー。とでもいうように仕切ってくれる幸田さんに助けられている。
「二次会行く人はついてきて。帰る人は気をつけて帰ってね。それじゃ、解散!」
幸田さんの懐の深さに感謝しながら会釈して、二次会メンバーを見送った。
「…じゃあ、俺たちも帰りますか。山之内、電車だよね。駅まで送るよ」
「あ、ありがとう。でも今日はここで」
いつも飲み会の帰りは最寄り駅まで橋本くんに送ってもらうことがほとんどで、今日もいつものごとく送るよ。と言ってくれて、ありがたいなと思いつつも断ると橋本くんが首をかしげた。
「あれ、家この辺だっけ?」
「ううん。今日は迎えが…」
さっき電話で『店の中で待ってて!』と言った朔ちゃん。
きっと迎えに来てくれるんだろう。
一人でも帰れるけど、朔ちゃんの様子も少し変だったし、店の中で待っていよう。と決めた。
「私を気にせず二人は先に…」
帰ってください。そう言おうとしたのを
「けいちゃん!!」と呼ぶ声に遮られた。