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Start Over Again
第6章 男の匂い
帰宅するまで朔ちゃんは黙っていた。
うーん…ダブルデートのこと怒ってる…?
でも約束しちゃったしな…。
と何も言うことができず、私も黙ったままでいた。
玄関に入ってパンプスを脱ぐとき、ほろ酔いのせいか少しよろけた。
咄嗟に朔ちゃんが体を支えてくれてドキッとしつつ「ありがとう」と言って逃げるように洗面所へ。
手を洗い終えてタオルで拭いていると、洗面所の引き戸を背にして立ってる朔ちゃんがやっと口を開いた。
「シャワーする?」
「んーー…化粧だけ落とそうかな…」
時間的にもう遅いし化粧だけ落としてさっさと寝たい。
化粧落としとコットンを棚から取り出し、おろしていた髪をしばろうとすると、手首を掴まれた。
「だめ。シャワー浴びて」
「え、なんで。明日入れば…」
手を引かれてまたよろけたと思えば、ボブッと朔ちゃんの胸に顔が埋まる。
え…何? と思っていると、朔ちゃんが私の肩あたりをクンクンと嗅ぐ。
「…匂う」
「え?」
「左肩と髪から、男物の香水の匂いがする」
「あ…」
そういえば、橋本くんが左肩にあごを乗せてきたっけ…。
でもそれだけで匂いってつくもん?
「なに…匂いがつくようなこと、したの?」
心あたりがある声を出した私に朔ちゃんが反応する。
どことなく声が低い気がする。
「え。してない、してないよ! その…酔っぱらいに絡まれたところを橋本くんに助けてもらって。たぶん…そのときにたまたまついたんだと…」
「たまたまねぇ…」
つぶやきながら少し体を離して私のカーディガンを脱がし、そのまま下に着ていたシャツの胸元のボタンをプチプチと外し始めた朔ちゃん。
焦って止めようとすると壁側に追い込まれる。
「さ、朔ちゃん…?」
「たまたまだとしても、他の男の匂いをつけたまま寝るなんて許さないよ」
真顔だけど力が入っているような目で見られて怒っているのがわかった。
ごくっ…と喉が鳴る。
「僕がぜんぶ脱がす? それとも自分で脱ぐ?」
「……自分で脱ぎます…」
「わかった。早く脱いで」
私から体を離して腕を組んだ朔ちゃんに凝視されながらシャツのボタンを外していった。