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Start Over Again
第8章 悪夢 と デート

「…やっぱり、けいだ」

名前を呼ばれて体が固まる。
近づいてきた見知らぬ男に朔ちゃんがすぐ反応する。

「あの、どちら様ですか」

探るように声を低くしてたずねる朔ちゃんに
「東といいます。けい…山之内さんとはむかしの知り合いでして。まさかこんなところで会うとは思いませんでした」
と答えて男はにこっと笑う。

…気持ち悪い。

「…本当に知り合い?」

様子のおかしい私を心配そうに見つめながら確認してくれる朔ちゃんに小さくうなずく。

「山之内さん、どこか具合でも悪いんですか?」

「ああ、そうですね。少し…ちょっとあんた!!」

腰をかがめて顔を覗き込んできた男が無遠慮に私のおでこに触れ、朔ちゃんが声を上げて男の手を叩き落とす。

「なに勝手に触ってるんですか!?」

「いてて…ひどいな。俺は心配して…」

「結構ですっ!!」

ここまで声を張り上げて怒ってる朔ちゃんは初めて見る。
不思議と怖く感じないし、おでこから男の手を離してくれて助かった。
あと数秒でも触られていたら涙が出ていたと思う。

「…けいちゃん、帰ろう。ほら僕につかまって」

うってかわって穏やかな声でささやきながら抱きかかるように立たせてくれる朔ちゃんに安堵する。

一刻も早く、ここから離れたい。

「あなたも早く、ご家族のところへ戻ったらどうですか」

「ああ…そうですね。そうします」

男の言葉にホッとしてるのもつかの間ー…

「会えて良かった。また、会いたいな…けい。じゃあね」

会えて良かった?
また会いたい?
何を言っているんだろう…。

男の言葉に悪寒のようなものを感じて足が震えた。

夢をみただけで苦しかったのに、実際にあの顔を見てしまったら苦しい上に気持ち悪くて仕方がない。

何で…今さら会ってしまうんだろう。
私が何か悪いことしたのかな。

ごちゃごちゃとした思考に惑わされて息が苦しい。

「…けいちゃん。何も考えないで。僕の声だけ聞いて…ゆっくり息をして。ほら、家へ帰ろう……」

朔ちゃんの優しい声を聞きながら、荒くなっていく呼吸にのみ込まれるように目を閉じた。


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