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Start Over Again
第8章 悪夢 と デート
同じデザインなのに、朔ちゃんと自分の足首を見比べるとなんだか少しだけ違うものに見えて不思議だ。
ぼんやりとそんな風に考えていると朔ちゃんが私の膝をツンツンとつつく。
「ごめんね? 無理やり買っちゃって。……だけど今日は初デートだから、何かカタチとして残るものをけいちゃんにプレゼントしたかったんだ」
「え…」
「せっかくなら同じもので、お揃いにしたくて…」
驚く私をよそに照れた様子ではにかむ朔ちゃん。
同じようなことを考えてたことが嬉しい。
「…私もね、何か記念に朔ちゃんに買いたいなって思ってた」
「そうなの!?」
「うん。お揃いで、とは考えてはなかったけど」
「そっか…」
「…気兼ねなく大事にしたいから、やっぱりお金は半分こにしよ。お互いに贈り合ったものにしたいし」
私の提案に、朔ちゃんはしばらく迷ったあとうなずいてくれた。
「わかった。けいちゃんからってことなら僕もめちゃくちゃ大事にする」
「うん」
1つ分の金額を渡してから、もう一度自分の足元に目を向ける。
いい買い物できたな~とホクホクした気分になっていると、すぐ近くから泣き声が聞こえてきて反射的にそちらへ目を向ける。
ベビーカーに乗って泣いてる乳幼児を見て、なんか見覚えあるなぁ…と考えながら母親の顔を見て驚く。
あ…れ…。
「同じ電車に乗ってた人だ…」
「ん? あそこの子連れの人?」
「そう。泣いてる子が玩具落として、それを拾って……」
母親の隣で、電車を降りるとき私に手を振ってくれた可愛い女の子を抱きかかえている男性を見て、
渡してあげたの。という続きの言葉が喉に引っかかる。
ドクンッ…と自分の胸の音が聞こえた気がした。
無意識に隣の朔ちゃんの手を強く握る。
「けいちゃん…?」と名前を呼ばれるけど反応できなくて、男から目をそらせない。
タイミング悪く私の視線に気づいた女の子がこちらに手を振り、つられるように男がこちらへ顔を向ける。
目が合った。
一瞬、ん? という顔をしたものの、すぐに驚いた顔をした男が女の子をベンチに座らせてこちらへ歩いてくる。
こ…来ないで…!
今すぐここを離れたいのに、それを朔ちゃんに伝えることができないまま、握っていた手をさらにギュウゥゥッと握りしめた。