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Start Over Again
第9章 過去 と 告白
そっと目を開いて、いつの間にか寝てしまっていたことに気づいた。
全身が温かい。目を少し上に向けると朔ちゃんの寝顔がある。首を動かしてよく見ると朔ちゃんも私も出かけたときのままの服で、どうやら帰ってきてそのまま眠ってしまったようだ。
何で眠ってしまったのか記憶を辿っていくうちに、あの男のことを思い出してしまって負の感情が溢れ出す。
じわりと涙が出てきて声を押し殺していると、朔ちゃんが身動きした。
「…あ…起きた? ……泣いてるの?」
すぐに気づかれて首を横に振るとヨシヨシと頭を撫でられた。
「…あの人…けいちゃんの元カレ?」
「……ん……」
そりゃ…あの男の態度を見ればわかるよね…と思いながら口を開くけど、泣かないように我慢しているから思ったように声が出ない。
「無理して喋らなくていいよ。うなずいてくれればわかるから」
そんなことを言ってくれるなんて、朔ちゃんはどこまで優しいんだろう。
「もしかして、この前けいちゃんが夜に泣いてたのって、あの人に関係あったりする?」
勘のいい朔ちゃんにドキリとする。
うなずきも首を横にも振らない私を見て悟ったのか、朔ちゃんは静かに息を吐き、
「そっかー………」とひとことつぶやいて黙り込んだ。
静かな空間でお互いの呼吸音と胸の音だけが聞こえるなか、朔ちゃんは頭や背中を撫で続けてくれている。
そんな朔ちゃんにあの男の存在を知られてしまって歯がゆいようななんとも言えない気持ちになったが、私の気持ちを優先して待ってくれている朔ちゃんには、あの男との過去をちゃんと話しておくべきなのでは…と思い至る。
だけど、聞きたくない。と朔ちゃんが言うなら話さないでおこう。そう思いながら、涙をぬぐって顔を上げた。
「さ…朔ちゃん…」
「ん?」
「あの人…東とのこと、何があったか…聞いてくれる?」
私の言葉が意外だったのか朔ちゃんは目を見開いた。
だけどしばらくして「うん。聞きたい」と言ってくれてホッとする。
でも、いざ話そうとすると、何から話せばいいのかわからない。
出会いとかは省くとして…別れることになった少し前からでいいだろうか。
話して何かが変わるのかわからないけど、朔ちゃんには話しておかないと私自身が前に進めない気がして、気を落ち着かせるようにはぁー…と静かに息を吐いた。