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Start Over Again
第9章 過去 と 告白
「…東さんとは1年くらい付き合ってて、お互い仕事が忙しくて会えても週に一度、平日の遅い時間で。なかなか家には誘ってくれなくて少しおかしいなぁとは思ってたんだけど…」
おかしいなぁ、としか思わなかった当時の自分が純粋すぎて切なくなる。
「付き合って3ヶ月経った頃から東さんが『子ども作って早く結婚しよう』ってよく言うようになって。まだ付き合って日も浅いし、仕事が楽しくて結婚はまだ先のことだと思ってたからやんわりと話をそらしてたんだけど、その1ヶ月後くらいから会う度に結婚の話をされて、話をそらすと無理やり抱かれるようになって…」
あの頃を思い出すと、ぶるりと身震いしてしまう。
「だけど私もそのときは好きだったから抵抗しなくて。それがさらに東さんの神経を逆撫でしたのか…結婚はしたくなくても体は許すのかって…する度に暴言を吐かれて軽く殴られたりもして…徐々に私の感覚も麻痺していって…」
恋は盲目とはまさにこのことだ。
「久しぶりに会った咲子に間違ってるよ! って言われるまで気づかなかったんだよね。東さんの異常性とそんな東さんに慣れてしまってることに。でもよく考えると、する前は決まってお酒を飲まされてたから、酔わせて正常な判断ができないようにされてたんだなって…」
それでもお酒だけは嫌いになれなかったけど。
「それで咲子とか周りの人に助けられながら、穏便に別れられるように話をしてたときに、東さんに他に付き合ってる人がいるってわかって。しかもその相手の人が妊娠してるって話で…」
「え…もしかして…」
黙っていた朔ちゃんが口を挟む。
その言葉にうなずいて話を続けた。
「うん。たぶん、今日会った人だと思う。よくよく聞くと、妊娠したその人より私のほうが好きだから早く結婚したい。私を妊娠させてしまえば、私と結婚できて、その人と結婚しなくて済むから…っていうクソすぎる話だったの…」
「……」
朔ちゃんをちらっと見ると絶句したように目を見開いている。
うん、それが普通の反応だよね。
私が朔ちゃんの立場なら同じ反応になるはずだし、泣くか怒るかしてるはず…。
「……っ……」
冷静に振り返れば平気かと思ったけど、だめだった。
落ち着いてたはずの目頭がまた熱くなっていく。