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永眠を捨てた青少年
第2章 2
 侍といえども、戦の起こらない今の平和な世ではめったに人など斬ることはない。
 小霧も剣術の腕を磨き続けたとはいえ、実際に人を斬ったことはなかった。

 しかし小屋で髭面と馬面を斬り、そしてあろうことか——
 しずまでも斬ってしまった。
 そのために小霧にとって人を斬るなど何の抵抗も感情もわかない行いと化した。
 ゆえに阿賀都を斬り捨てても、何も感じなかった。
 まして龍玄に与していた家来など、どうでもよかった。

 続けて小霧は、厳高に龍玄の居場所を問いただしたが、彼も阿賀都と同じく何も知ってはいなかった。
 もちろん、厳高も斬り捨てた。

 小霧の所業に、さすがに屋敷内は大混乱になった。小間使いたちは我先と逃げ出し、義母も月下丸と女中を伴い出ていった。
 その際、誰かがあわてて行灯を倒してしまったらしく、屋敷に火がついた。消火する者は誰もおらず、火はどんどんと燃え広がっていった。

 その中で、小霧は庭で鱒壱と斬りあった。
 結局、鱒壱でさえも龍玄の居場所は聞かされていなかった。

 鱒壱は家来の中では剣の腕のたつ男だったが、ただでも実力が抜きん出ていて、なおかつ感情を捨て去った小霧の敵ではなかった。
 鱒壱は呪詛の言葉を吐きながら、小霧の前で絶命した。
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