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第3章 ３

第３章


（１）

　シズクは——しずは——まだみたらし団子が一本だけ残っているテーブルを挟んで、呆然と立っているサトウ——小霧を見つめていた。

　しずは、なかなか止まらない涙で頬を濡らしたまま、ゆっくり立ち上がって言った。
「……もちろん……私がしずだなんて、まだ信じられないという気持ちの方が大きいですよね……小霧さまと違って、私の方は姿が違いますから……」
　泣いているせいで、しずの声は時々詰まる。

　しずは指で涙をぬぐいながら続けた。
「……でも、でも、本当に私なんです……しずなんです……あのとき、死ぬ間際までのことも全部覚えています……小霧さまは……左手首がないのに両腕で……しっかりと、ずっと……抱きしめていてくださいましたね」

　小霧は立ち尽くしたまま、かすかに、小刻みにうなずく。
　二人の他に、そのことを知るものは誰も、いない。
　小霧は右手で一切の傷痕もない彼の左腕をなでた。

「しず……本当にすまなかったと思っています」
　小霧は、両腕をまっすぐ下に伸ばして直立の姿勢をとると、頭を下げた。