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永眠を捨てた青少年
第3章 3
「……すべては……僕が未熟だったせいなのです。あなたを守れなかった……つらい思いもさせてしまった……」
 小霧の顔は下を向いていて見えない。
 見えるのは、小霧の顔から床に向かって途切れ途切れに落ちていく小さな水滴だけだ。

「そのうえ、あろうことか……僕の手であなたを斬ってしまった……! 僕は……」「いいんです」しずがさえぎるように大きめの声を出した。

「……いいんです……小霧さまが悪いんじゃないんですから……それに、他の人に殺されるくらいなら……小霧さまに殺される方がいいです」
 小霧は、頭を下げたまま上げようとはしない。

「斬られたときの小霧さまの目も……覚えています。私は……この方になんてことをさせてしまったのだろうと申し訳ない気持ちでいっぱいで……でもそんなことより……」
 しずは、自分の両手を彼女の胸に当てた。そして続けた。

「そのあと、意識がなくなるまで……ずっと抱きしめてくださった小霧さまのぬくもりの方が……もっとうれしくて覚えているんですよ? 抱きしめてくださったの、あれが最初で最後でしたけど……」

 しばらくだまったあと、しずは少しうつむき気味に言った。
「……あれが最後だなんて……イヤです……」

 小霧は、ようやくゆっくりと頭を上げた。そのやさしげな目は、濡れて赤くなっていた。
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