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永眠を捨てた青少年
第3章 3
(2)
洋館の一階裏手にある駐車場には五台のハイグレード車が並んでいる。
そのうちの一台、黒塗りのセダンの後部座席に座っている小霧は、前方の自動シャッターが少しずつ上っていくのを眺めていた。
小霧はそのすらりとした体型に合わせた、黒に近い濃色のスリーピーススーツを身に着けている。
運転席で白い手袋でハンドルを握っている雀之丞が振り向きもせずに言った。
「さて、どこへ行きましょうか?」
「……おかしいと思ったんですよ、あなたが着替えなくていいなんて言うから」
小霧は憮然と言った。
「着替えていらっしゃるではありませんか」
「着物は目立つ」
「一旦、あの場を離れたがっていらっしゃるのでは、と思いましたので」
「立ち聞きとは感心しませんね」
「たまたまでございます。ご行為の最中は外して、頃合いをはかって戻ってまいりましたのでご安心を」
「ご行為いうな」
シャッターが上がりきると、車はゆっくりと夜の屋外へと走り出した。森に挟まれた専用の車道を静かに進んでいく。