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永眠を捨てた青少年
第3章 3
 小霧はときおり顔をしかめながら、しずにされるがままになっていた。
 二階廊下に目をやる。雀之丞と胡珀の姿はもうない。傷の手当てに行ったのだろう。
 開きっぱなしの玄関の外は、いつの間にか淡く明るくなってきていた。夜が明けてきたようだ。

 ふと、その玄関扉の方から物音がした。
 徐々に明るくなっていく日の光に照らされた、黒い体に左目に白縁のある猫が入ってきた。
 小霧が顔だけを動かしてそちらを見る。しずも顔を上げて猫を見た。

 猫は二人のそばまでやってきて、交互に顔を見つめる。
 やがて猫は座って小さく、にゃぁ、と鳴くと立ち上がって玄関から外へと出ていった。
 小霧としずは目を合わせて、くすくす笑った。

「……色も縁も逆だけど……あいつにそっくりでしたね」小霧が言う。
「弥助ちゃんの生まれ変わりかもしれませんね」しずが言葉を返す。
「生まれ変わってまで何しに来たのか」
「ずっとあのころから……私たちを心配していてくれたのかも」
「しず」
「はい」
 小霧は内ポケットから小さなケースを取り出すと、それを開けた。
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