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永眠を捨てた青少年
第3章 3
 しずは、しばらくの間ソファに座ってもたれたまま、小霧をずっと見つめていた。
 たしかに空腹を感じてはいる。
 けれども——今はそんなことはどうでもよかった。

 ゆっくり頭に手をやる。
 指先が、梅の髪飾りに触れる。

 しずは立ち上がってスリッパを脱ぎ、ベッドの上に静かに乗った。
 かけ布団越しに小霧の体にまたがって座り、両手をベッドについて覗き込むようにその寝顔をじっと眺める。

 ——寝顔……
 ——かわいい……
 ——今の体だと……私の方がお姉さんなんだよね……
 小霧は顔には傷を負っていないので、いつもの端正なきれいな顔立ちのままだ。
 それは心なしか、普段より大人びた顔に見える。

 しずの胸の鼓動は高まり、体の内側から熱くなってくるのを感じる。
 いろんなものが頭の中を駆け巡り、胸をかきむしりたくなる。

 しずは上半身を起こして両手で顔を覆いながら、小さく何度もうなった。
 肩が勝手に小刻みに揺れる。
 今どんな顔になってしまっているだろう。
 変な笑みを浮かべて、みっともない表情になってないだろうか。
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