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永眠を捨てた青少年
第1章 1
 シズクは叫び声を上げた。が、その声は立て続けに上がる花火の音にかき消された。
 彼女の目はもはや潤んでおらず、ただ単に涙があふれて頬を流れ落ちていた。

    ※  ※  ※

 広いリビングの入り口で、浴衣の上に長く白いローブをかけて立っているシズクは、うつむいたままだった。

 その隣には、自らの役割に徹して冷静な顔を保っている祓村がつき添っていた。
 シズクの正面では、禍須賀が腕を組んで仁王立ちして彼女を見下ろしている。その顔は険しさに満ちていた。

 シズクはうつむいたまま、消え入りそうな声で言った。
「お父さま……申し訳ございませんでした」

 突然、禍須賀が大きく両腕を広げると、正面からシズクを抱きしめた。
「シズク……よかった……無事に帰ってきてさえくれれば、それでいい」

 禍須賀はシズクから体を離すと彼女のローブを少し脱がせた。浴衣はしわや土汚れがついている。そして、多少は乾いたようだが、腰から下の生地に水をかぶったような跡があった。

「シズク、まずはゆっくり風呂に入ってきなさい……この浴衣はもう捨てろ、どうせ去年のだろう? 花火を見に行きたかったのなら先に言えば新調したのにな」
 シズクは顔を上げず、浴衣を隠すように手でローブの前を合わせた。
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