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永眠を捨てた青少年
第3章 3
 胡珀が階段を下りていくのを見届けたあと、雀之丞は静かに診察室扉横の壁に、立ったまま背中をあずけた。
 雀之丞の足が、徐々に力が抜けていくように折れていき、背中は壁をすべって下へと落ちていく。

 そのまま、雀之丞は廊下の床にへたり込むように座った。
 そして、顔を上げて天井を見上げた。

「……若さま……やっと……やっと……たどり着けましたね……」
 雀之丞は周りに聞こえるか聞こえないかのような、か細いささやき声をもらすと目をつむった。
 その閉じた目からあふれ出した涙は、ひたすらに雀之丞の頬を伝い続けた。

     ※   ※   ※

「……しず」
 ベッドの上で、小霧はしずの方を見て言った。
 しずはゆっくり顔を上げた。目を真っ赤にして涙を流し続けている。
「涙なんか拭いて……一緒にみたらし、食べましょう」

 しずはハンカチを手にして自分の涙をぬぐった。
 そしてサイドテーブルのみたらし団子の方へと手を伸ばした。
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