この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
永眠を捨てた青少年
第1章 1
(3)
シズクはゆっくり顔だけ動かして開いた扉の方を見た。
顔を動かすだけでもつらい。
シズクは目をこらしたが、部屋の中も扉の向こうも暗いために、開けたのが誰なのかはよく見えない。
その人影は静かに、そしてすばやく近づいてきたかと思うと、広げたバスローブをシズクの全身に覆うようにかけて、ゆっくりとペットボトルの口を唇に当ててきた。
「……あわてず、少しずつ飲んでください」
そのささやき声の主は——
『サトウ』だった。
——どうして……?
——銃で頭を撃ち抜かれたのに……?
——この部屋は父以外、入れないのに……?
——こんな姿、見られたくない……!
——あ……だからバスローブで隠してくれたんだ……
——でもどうして? なぜ……?
ぼんやりしたシズクの頭の中で、一気にいろんなことが駆け巡る。
シズクの頬の上を何かが這ったことに気づいた。
勝手に涙が流れてきたらしい。