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第1章 １

　シズクは胡珀に傷の手当をしてもらい、風呂はまだ傷に悪いからと丁寧に体も拭いてもらった。頭髪だけは、ヘアサロンにあるような大きな洗髪器具を部屋に持ち込んで洗ってくれた。

　食事も食べやすくあっさりした味のものから始まり、体力が回復するにつれ一食ずつその内容は豪華になっていった。

　胡珀は使用人でありながらも品のある雰囲気をまとった女性で、いつも半袖パフスリーブの落ち着いたワインレッドのワンピースを着用していた。
　明るく気さくで、すぐにシズクとはとりとめもない会話を交わすようになった。雀之丞とは夫婦であることも聞いた。

　彼女はちょっとテンポの遅いのんびりとした口調だが、それにもすぐ慣れた。
　胡珀との会話の内容は他愛もないことばかりだった。胡珀が意識的にそのようにしているようだった。

　素性を聞かれるわけでもなく、サトウとの間に何があったかもまったく触れてこないし、サトウのこと自体も話題にしない。

　サトウからそう言いつけられているのか。それとも彼女の気配りなのか。
　いずれにせよ、シズクにとっては心が楽だった。