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永眠を捨てた青少年
第1章 1
※ ※ ※
玄関前から正門へと続く石畳の長い通路の上に立ち、ワインレッドのワンピース姿のシズクは通路の左右を見た。一面緑や花々で埋まっている庭園だ。
広すぎてどこまでが庭園なのかよく分からない。境界を示す壁も柵も見えない。
真夏の日差しは強いが、この土地は山の中にあるからなのか、東京にいるときほどの厳しさは感じない。
胡珀が強引にもたせてくれた日傘を差しながら、シズクは通路沿いに歩き始めた。
途中、生い茂る植木の間から現れた通路を右に曲がった。
その先には、雀之丞がじょうろを片手に中腰で花に水をやっている姿が見える。この暑い日差しにもかかわらずスーツ姿でジャケットもネクタイもつけている。
やがてシズクは雀之丞のすぐ隣までやってきた。
トレニアやペチュニア、マリーゴールドなどのいろんな花が咲き誇っている。
雀之丞は相変わらず気難しそうな顔をしていた。
「あの……こんにちは……」
シズクはおそるおそる口にした。
雀之丞は顔だけをシズクに向けると手を止めて、直立し正面を向いて頭を下げた。
「こんにちは」
それだけ言うと、雀之丞は再び中腰になって花壇の水やりを再開した。