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永眠を捨てた青少年
第2章 2
第2章


(1)

 息をひそめながら空を見上げる。
 快晴だ。雲ひとつ見当たらない。

 ゆっくりと静かに深呼吸すると、小霧は上に向けていた顔を今度は下に向けた。自らの服装が目に入る。
 いつもの小袖に袴、そして打刀と脇差の大小二本差し。

 こういう時はなるべく人目につかないようにはしたいが、人の多い江戸市中においては、武家の者が中途半端に町人風の格好をしたり手ぬぐいで顔を隠したり、そんな変装するよりも普段通り鹿狩(かがり)家の人間として、侍らしく堂々と歩いていた方が逆に目立たないものだ。

 それでも、今は——今だけは、鷹之丞(たかのじょう)たちに姿を見られたくない。
 つい先ほど辻を曲がる直前、小霧は偶然半丁先を走る鷹之丞の姿を目にするや否やきびすを返し、できる限り平静を装いつつ近くの木戸から細い裏道へとすばやく曲がり、建物の陰に身を潜めた。

 その鷹之丞を見た少し前にも、遠目に鱒壱(ますいち)が走っていくのを見た。
 なぜ彼らが走り回っているのか……?
 理由がまったく思い当たらない。
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