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永眠を捨てた青少年
第2章 2
 小霧は自分の周りを見た。どうも今は長屋の表店と裏店の間にいるらしい。幸い周りに住人の姿はない。
 その時、表通りを走るひとつの足音が近づいてきた。

 小霧はできる限り表店の裏の壁に体を密着させつつ、ほんの少し顔を出し、横目で表通りの方を注意深く見る。
 鷹之丞だった。
 鷹之丞はそのままこちら側に入ってくることなく走り去っていった。

 もう一度ゆっくり静かに深呼吸し、小霧はそのまましばらく動かなかった。
 おそらく——もう大丈夫だろう。
 小霧は意を決し、表通りへと出ていった。

    ※  ※  ※

 小霧が裏口にあたるその引き戸を静かに五回小突くと、中から女の声がした。
「ご注文は?」
「みたらし団子十一本」

 小霧が小声で答えると、引き戸が少し開いて中からお菊が笑顔をのぞかせた。いつもの小袖にたすきがけ姿だ。
「一度じゃ食べ切れませんね、さ、ぎ、り、さま」
「茶化さないでください、お菊どの」
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