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永眠を捨てた青少年
第2章 2
 お菊は小霧より歳上とはいえ十八歳、たった一つしか違わないのに小霧を子供扱いするような口をきくことも多い。
 確かに彼女は実際の年齢よりもずいぶん大人びていて顔立ちも整っている。だからというわけではないが、小霧はお菊のふるまいを不快に思ったことはない。

 お菊はあっけらかんとした笑顔のまま言う。
「もう『十一本目』なんですねぇ。早いなあ……でも十一本を一回で食べ切るのは難しいかも? 二回に分けて召し上がってもうちの店は構いませんよぅ?」

 小霧が少し苦笑いしていると、お菊は一旦彼女の周囲を確かめてからすばやく小霧の耳元に顔を寄せた。
 その表情から笑顔は消えている。そして小声で言った。
「……しずちゃん、何か心配ごとがあるんじゃないかって気がして。本人はそんなことはないって言ってるけど」
「……お気づかい、ありがとうございます」
「呼んできますね」
 お菊は笑顔に戻り、奥の狭い廊下を小走りに駆けていった。

 小霧は戸口の外、壁沿いに置いてある小さな長椅子に腰かけた。そして正面を見上げる。
 目の前も左右も、全部高い板壁で囲まれている。さらにその外側には生け垣もあって、隅にある戸口以外に出入りできる場所はない。その戸口もかがみながらでないと通れないほどの小ささだ。
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