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永眠を捨てた青少年
第2章 2
 ふと、お菊が言っていたことを思い出す。
「えっと……しず、何か心配ごとがあるのですか……?」
「えっ」しずははっとした顔で小霧を見た。
「……あるんですね?」
「え、あ、ない、ないですないです、そんなのないです……」

 今に始まったことではないが、しずは隠しごとが下手だ。そこがまた良いところではあるのだが——。

「しず、本当のことを言ってください」小霧はやや語尾を強めて言った。
「はい! あの、えっと……ここ数日、誰かに見張られているような気がして……あ、でもでも、気のせいだと思うんです! たぶん……」
「店の客とか?」
「わかりません……お店でも外でも、なんとなく……」

 その時、戸口の扉を内側から静かに五回小突く音がした。
 お菊の合図だ。もうそんなに時が経ってしまったのか。

「またお菊どのに怒られてしまう」
 小霧はあわてて手つかずのみたらし団子をつかんでかぶりついた。しずも一本急いで食べる。
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