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永眠を捨てた青少年
第2章 2
「行儀、悪くて、すみません……もし何か危険を感じたらすぐに鹿狩の屋敷に来てくださいね」小霧は団子をほお張ったまま続けた。「必ず私がしずを守ります」
しずは団子を食べながらにっこりと笑顔を小霧に向けた。
その時、二人の足元を小さな影がすばやく走り抜けていった。
二人が顔を上げる。
いつの間にか団子を一本まるごとくわえた、白い体に右目に黒縁のある猫が板壁の上に立って二人を見ている。
「弥助……あいつ、狙ってたのですね」
小霧が苦笑いしながら言った。
「たぶん、違いますよ」しずはやさしい笑顔をその猫に向けた。「早く食べ切るのを手伝ってくれたのよね、弥助?」
弥助とは、しずがまだ幼いころに亡くなった弟の名だ。いつしかこの猫をそう呼ぶようになっていた。
弥助はじっと二人を見て止まっていたが、やがて壁の向こうへと降りていった。
「食べたいなら、横取りする時間はたくさんありましたでしょ?」
しずはくすくす笑った。
突然、戸口の引き戸がすばやく開いてお菊が走り出てきた。
おかしい。もう一度引き戸を小突く合図をするはずなのに——小霧がそう思っていると、お菊が小霧のそばまで来て耳元で小声で言った。
しずは団子を食べながらにっこりと笑顔を小霧に向けた。
その時、二人の足元を小さな影がすばやく走り抜けていった。
二人が顔を上げる。
いつの間にか団子を一本まるごとくわえた、白い体に右目に黒縁のある猫が板壁の上に立って二人を見ている。
「弥助……あいつ、狙ってたのですね」
小霧が苦笑いしながら言った。
「たぶん、違いますよ」しずはやさしい笑顔をその猫に向けた。「早く食べ切るのを手伝ってくれたのよね、弥助?」
弥助とは、しずがまだ幼いころに亡くなった弟の名だ。いつしかこの猫をそう呼ぶようになっていた。
弥助はじっと二人を見て止まっていたが、やがて壁の向こうへと降りていった。
「食べたいなら、横取りする時間はたくさんありましたでしょ?」
しずはくすくす笑った。
突然、戸口の引き戸がすばやく開いてお菊が走り出てきた。
おかしい。もう一度引き戸を小突く合図をするはずなのに——小霧がそう思っていると、お菊が小霧のそばまで来て耳元で小声で言った。