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永眠を捨てた青少年
第2章 2
「……お家の方です、ただならぬご様子でしたので店先でお待ちいただいております」
 それを聞きながら小霧がしずを見てうなずく。しずは急いで空になった皿を取り、戸口から中へと入っていった。

 小霧は立ち上がってお菊に向き直る。お菊の深刻な表情を見れば、少なくとも今は彼女に小霧を茶化すなどといったつもりは毛頭ないことは明白だった。

 お菊は続けた。
「小霧さまはお食事中に気分がすぐれなくなって、中でお休みいただいているとお答えしております」
「……かたじけない」
 いつものことながら小霧は機転の利くお菊に感謝の意を述べた。

     ※   ※   ※

 そのあと、しずは物置部屋にひとり立っていた。
 そして懐から髪飾りを包んだ布を取り出した。

 しずはそれをゆっくり鼻に近づけて思い切り息を吸い込んだ。
 何度も、何度も何度も何度も嗅ぐ。むさぼるように。
 しずの恍惚とした瞳からは涙がうっすらとこぼれた。
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