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永眠を捨てた青少年
第2章 2
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小霧はまだ気分がすっきりしないふりをしながら、茶屋の中から表へと出た。
店先には、ここに来るまでにやり過ごした鷹之丞と、もうひとりの家来、鱒壱が立っていた。
鷹之丞は鹿狩家古参の家来で歳は四十手前、鱒壱は三十手前である。
二人とも表情が険しい。
どうしてここに居ることが分かったのだろうと思ったが、街中で片っぱしから聞いて回ればさして難しい話ではない。お菊も、この二人の様子を見て知らぬ存ぜぬを決め込む状況ではないと感じたのだろう。
小霧が病人らしい適当な言葉を口にしようとした時、鷹之丞が小霧に駆け寄り耳打ちした。
「小霧さま——ご気分がすぐれない中、まことに恐れ入ります。一大事でございます——月下丸さまがお亡くなりになりました」
小霧は鷹之丞のまったく予想外の言葉に病人のふりをすることも忘れ、声が出せないまま彼の顔を凝視した。