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永眠を捨てた青少年
第2章 2
 かつて義母が身ごもった第一子は死産だった。義母は医者にもう子供を授かるのは難しい体になったと宣告されたために小霧は養子に迎えられたのだが、天は義母を見捨てなかったのか、その後に義母は月下丸を無事出産した。

 その義母の喜びようは大きかった。小霧もよく覚えているし、自分のことのようにうれしかった。
 そんな過去があるというのに、義父は——
 ——よくそんな不謹慎な嘘を言えたものだ……。

 小霧は嫌悪感を抱いた。だがそれを顔に出すことはしないし、鹿狩家当主である義父に逆らう気は微塵もない。
 そもそも義父はこういうことを平気でできる人間なのだ。今に始まったことではない。

 しばらくすると龍玄はかすかに眉を動かして、重く低い声で言った。
「小霧……お前、こそこそと隠れて何をやっている……?」
 小霧はわずかに体をこわばらせた。
 思い当たることはひとつしかない。
 小霧は腹をくくることにした。

「義父上……お許しをいただきたいことがございます」
「茶屋の女中ごときと一緒になるなど断じて許さん」龍玄はすかさず言った。
 ——やはり知られていたか……
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