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永眠を捨てた青少年
第2章 2
 そうであれば、逆に話は早い。
「鹿狩家の家督を継ぐのは月下丸です。私の婚姻相手は好きにすればよいと義父上はおっしゃいました」
「お前も鹿狩家嫡子であることには変わりがない。常識の範囲で選べという意味に決まっているだろう」

 小霧は両手を前につき、畳近くまで深く頭を下げた。
「重々承知しております……ですがそこを曲げて何卒お許しをいただきたく存じます」
 龍玄は何も答えない。
 小霧もずっと頭を下げたまま動かない。

 やがて龍玄が立ち上がる音がした。その音は縁側へと遠ざかっていく。
「小霧」
 龍玄の声に、小霧は顔を上げた。
 龍玄は庭に下り立ち、いつの間にか打刀を握っている。
 小霧も脇に置いていた自分の打刀を手にすると縁側へと進み、草履をはいて庭に下りた。
 龍玄が立ったまま、小霧の方へと向き直る。

 その時。
 小霧の目は、龍玄の左手が鯉口を切ったのを捉えた——
 次の瞬間。
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