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永眠を捨てた青少年
第1章 1
※ ※ ※
禍須賀(かすが)はソファに座ったまま、前かがみで自らのひざに両ひじを乗せて顔面を覆っていた。
二十畳ほどはあろうかという広大なリビングはシンプルかつ無機質な造りで、フローリングにソファとテーブル周りにカーペット、他には時計だけがかけられた壁と大きな窓を覆うカーテンくらいで、装飾品はほとんどない。部屋全体の色はベージュや白といった薄い色で統一されている。
三十歳くらいの仕立ての良い黒スーツの男、祓村(そぎむら)が入口扉前に立っており、ソファに座る禍須賀を見ている。特に感情を顔に出しているわけでもない。
リビングにいるのはこの二人きりだった。
突然、禍須賀が大声を上げて両手でテーブルを叩いた。
五十二歳になる禍須賀は大柄で太った体つきで、ひと目で高級と分かるスリーピーススーツに身を包み、元々は柔和であろう顔つきを険しくさせている。
祓村が冷静な顔つきのまま、静かに口を開く。
「会長、お気持ちはお察ししますが、彼らなら必ずシズクさまを捜し出して連れ戻してくれます」
「分かっている!」
禍須賀が声を荒げる。