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永眠を捨てた青少年
第2章 2
 小霧の全身から、感覚というものが抜け落ちる。
 抜け落ちたのは——
 感覚だけだろうか——?

 なにか、いきなり張り詰めていた糸が切れたような、心に無理やり穴をこじ開けられたかのような——
 心の中で踏み外すことのない何かを、踏み外してしまったような——
 小霧は痛みも、風も、何も感じなかった。

     ※   ※   ※

 それからひと月ほどが経った。
 夜明け前は少し冷える時期になってきた。

 小霧は、もっと自分の中でためらいや揺らぎ、そして恐怖が生じるものと思っていた。
 もっと苦悩にさいなまれるものだと覚悟していた。
 しかし、このひと月の間、小霧は自身で意外に思うほど落ち着いていた。

 そして何より——
 龍玄に真剣を向けられたあの時から、小霧は自分が確実に変わってしまったことを自覚していた。
 当然ながら、多少の迷いはあった。しかしそれも小霧の決意を変えるにはほど遠いものだった。
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