この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
永眠を捨てた青少年
第2章 2
約束の待ち合わせ場所まではまだもう少し距離がある。時の余裕はさほどない。
しずは手に握っている梅の髪飾りを見た。
再びそれを握る。
しずは顔を上げてさらに足を速めた。
その様子を——少し離れた竹林の中から見ている二つの影があった。
※ ※ ※
「しずちゃんは無事、先に送り出しましたよ」
お菊は小さな、ほとんど蚊の鳴くような声で言った。
小霧がうなずく。
小霧はお菊の茶屋の物置部屋で着替えていた。木綿の小袖の着流し、そして顔を見えにくくするために手ぬぐいで頬かむり。いかにも町人といった姿だ。
しずも女と分からないよう、同じ格好をさせている。
着替え終わった小霧が脇差だけを腰に挟み、風呂敷包みを持ち上げる。
お菊が手早く、小霧が来るときに着ていた着物一式を別の風呂敷に包み、打刀を床下に隠す。
「……いつの日か、またお会いできたらいいですね」お菊が言う。
「いずれ必ずお礼には参ります」小霧が答える。
ふたりは静かに部屋を出て、すぐ近くにある戸口から外へ出た。
いつも——しずと逢っていた場所である。
しずは手に握っている梅の髪飾りを見た。
再びそれを握る。
しずは顔を上げてさらに足を速めた。
その様子を——少し離れた竹林の中から見ている二つの影があった。
※ ※ ※
「しずちゃんは無事、先に送り出しましたよ」
お菊は小さな、ほとんど蚊の鳴くような声で言った。
小霧がうなずく。
小霧はお菊の茶屋の物置部屋で着替えていた。木綿の小袖の着流し、そして顔を見えにくくするために手ぬぐいで頬かむり。いかにも町人といった姿だ。
しずも女と分からないよう、同じ格好をさせている。
着替え終わった小霧が脇差だけを腰に挟み、風呂敷包みを持ち上げる。
お菊が手早く、小霧が来るときに着ていた着物一式を別の風呂敷に包み、打刀を床下に隠す。
「……いつの日か、またお会いできたらいいですね」お菊が言う。
「いずれ必ずお礼には参ります」小霧が答える。
ふたりは静かに部屋を出て、すぐ近くにある戸口から外へ出た。
いつも——しずと逢っていた場所である。