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永眠を捨てた青少年
第2章 2
 約束の待ち合わせ場所まではまだもう少し距離がある。時の余裕はさほどない。
 しずは手に握っている梅の髪飾りを見た。
 再びそれを握る。

 しずは顔を上げてさらに足を速めた。
 その様子を——少し離れた竹林の中から見ている二つの影があった。

     ※   ※   ※

「しずちゃんは無事、先に送り出しましたよ」
 お菊は小さな、ほとんど蚊の鳴くような声で言った。
 小霧がうなずく。

 小霧はお菊の茶屋の物置部屋で着替えていた。木綿の小袖の着流し、そして顔を見えにくくするために手ぬぐいで頬かむり。いかにも町人といった姿だ。
 しずも女と分からないよう、同じ格好をさせている。

 着替え終わった小霧が脇差だけを腰に挟み、風呂敷包みを持ち上げる。
 お菊が手早く、小霧が来るときに着ていた着物一式を別の風呂敷に包み、打刀を床下に隠す。

「……いつの日か、またお会いできたらいいですね」お菊が言う。
「いずれ必ずお礼には参ります」小霧が答える。
 ふたりは静かに部屋を出て、すぐ近くにある戸口から外へ出た。
 いつも——しずと逢っていた場所である。
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