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永眠を捨てた青少年
第2章 2
 前かがみ気味になるように縛られているしずの背中や尻には、赤く長い鞭の痕がいくつも刻まれていた。
 しずの後ろには、馬用の鞭を手にした大柄の男が立っており、正面には髭面の男が木箱に腰かけてしずを見上げている。

 髭面の男が言った。
「……小娘、弱々しそうな見てくれなのにがんばるじゃねえか」

 しずは涙や鼻水、唾液までも垂れ流した顔をうつむかせている。結っていた髪はとうにほどけて、だらしなく真下に垂れ下がっている。しずの顔から床に垂れ落ちる汁もあれば、その髪に絡みついて糸を引いている汁もある。

「なあ……お前はどこに行こうとしていたんだ? 教えてくれよ?」
 しずはだまっていた。
 再び鞭が空を切る音。
 突き出すようにさせられている尻に、何発も鞭が打ち込まれる。
 しずはまた絶叫した。

 出したくて声を出しているわけではない。
 勝手に口から飛び出していく。
 自分の声とは思えない、獣の咆哮のような声しか出ない。
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