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特別棟の獣
第13章 痛む心
「ごめんね…」

「え?」

「私と付き合ってるからあんな事言われちゃうんだよね…」

「ちょっとこっち来て」


吏生は私をロビーの人目の付かないソファに座らせると、前に屈んで私の顔を覗き込んでくる。


「百合のせいじゃないよ」

「でも…っ」


吏生だってあんな事言われていい気はしないはず…

俯いて何も言わない私に、吏生は話を続けた。


「百合と出会う前は散々遊んでたからね…、そのバチが当たっちゃったんだよ。だから百合は関係ないよ。

それに百合が朝倉コーポレーションの令嬢だってことも、俺が親父の会社を継ぐ事もお互い知らなかったでしょ?

だから他の人になんて言われようがどうでもいいんだよね。

百合だけ分かってくれてれば」



私が心配し過ぎなのかな……。


「俺が好きなのは百合だけだから」


そう言って吏生は俯いた私の顔を上げ、唇に触れるだけのキスを落とした。


「ちょ、吏生っ…こんな所で駄目だよっ」

「誰も見てないよ」

「もうっ…」

「もう一回しよ」

「駄目っ!……んんっ」



確かに私の視界に人はいなかった。


だから気づかなかった。

吏生があの女の人に見せつけるようにキスをしていただなんて…
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