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特別棟の獣
第26章 最愛の人は特別棟の獣
「吏生さん来たんじゃね?」
周りがざわざわとしてくると、來がそう言った。
ざわつく方へ視線を向けると、吏生が大きな花束を持ってこっちに歩いてくる。
それを見て私の口元が緩む。
周りの女の子たちが吏生を見てキャーキャー言うのも気にならなかった。
「吏生っ」
吏生へ駆け寄ると、優しい眼差しで私を見つめた。
「百合、卒業おめでとう」
「ありがとう」
花束を差し出され、私は腰を抱かれながら吏生の車に乗せられた。
「吏生さん、俺も乗せてって」
「いいけど」
同じマンションに帰るからと、嫌な顔をするけど吏生は來にもだいぶ優しくなった。
この1年、吏生が大学に来れない代わりに來が私のそばに居てくれたから多少來のわがままを聞くのは吏生なりの優しさ。
「吏生さんち今日夕飯何〜?」
「レストラン予約してあるけど」
「なーんだ。百合の飯食いに行こうと思ったのに」
「來にもう世話になることないから百合の手料理はダメだよ」
「え〜。百合の飯美味いのに」
たまに來も私の部屋に来てご飯を食べることはあった。
吏生も來も私の作ったご飯をいつも美味しいと言ってくれるのが嬉しい。
仕事を頑張ってる吏生には美味しいご飯を食べてもらいたいし、お世話になってる來にはお礼のつもりだった。