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特別棟の獣
第3章 お気に入り

「何、吏生さん」


え………

聞き間違いじゃない。

今、吏生さんって言ったよね…


今日1番聞きたくなかった人の名前に身体も小さくピクッと反応してしまう。


「百合?目の前に居るけど」


ヤバい……

吏生さんに見つかる…

咄嗟に机から降りて焦って教室から出ると、また腕を掴まれて捕まってしまった。


「やだっ、離して!」

「逃げんな」

「お願い…帰りたいの」

「吏生さんに好かれて何が不満なんだよ」

「あんな人大っ嫌い!私を皆と一緒にしないでっ」


やだ…また捕まったら昨日みたいに無理矢理されるかもしれない。

痛いけど力一杯腕を引っ張ってどうにか逃げようとしても、男の人の力には敵わない。



会いたくないのに…



「早く来い、吏生さんには裏庭の方に逃げられたって言ったから正面から出ればバレない」


「え…?」


嘘ついてくれたの……?

手を引かれるがままついて行けば、吏生さんに見つかることなく大学を出ることができた。
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