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特別棟の獣
第1章 出逢い
「おいで」
読んでいた小説をバックに入れられて手を引かれるから、急いでヒールを履いた。
吏生さんに連れられて裏庭から出ると、生徒が沢山いて、その視線は私達に向けられた。
その殆どが女の子達からのもので私の身体が強張るのが分かる。
「あ、あの………」
「どうしたの?」
「手を離してほしいです…」
「百合ちゃん逃げそうだからダメ」
そのまま校舎を抜けて行くと「おー、吏生」と別の男の人の声がした。
「可愛い子連れてるじゃん」
「でしょ?今日はこの子にする」
よく分からない会話だけど、声を掛けてきた人に視線を向けると黒髪のこれまたカッコイイ男の人がいた。
類は友を呼ぶとはこの事だろうか。
イケメンは友達もイケメンなのか。
それほど2人は容姿が整っていた。
暫く足を進めていると「吏生〜」と甘ったるい声が聞こえてきた。
「ねぇ、今日は私って約束したじゃない」
「知らねぇよ、退け」
女の人に目を向けることも無く、吏生さんは足を止めもせず歩いている。
その人の視線は鋭く、怖くて私は俯くことしかできなかった。