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第169章 大通公園

「初めまして・・・
　そのせつは、由美がお世話になりました」

「い、いえ・・・
　こちらこそ、東出さんには助けてもらいました」

二人のやり取りを彼女は、どんな気持ちで聞いているのだろうか。
始終、嬉しそうに白い歯をこぼしているのだけど。

旦那様は爽やかな好青年で、啓介は本当に嬉しく思った。

「いかがですか・・・
　どこかで、お茶でも・・・」

「い、いえ・・・・
　飛行機の時間があるので・・・
　スミマセン」

気を遣う彼の気持ちが嬉しく、啓介は咄嗟に嘘をついた。
実際は空港でゆっくり昼食をとれるほどの余裕があったからだ。

しかし、いくら「ヴァーチャル」の世界とはいえ、由美とは「セフレ」状態だったのだ。
男の顔をまともに見ることさえできないのに、まして話など、とんでもないことだった。

由美も何も言わずに黙っているが、狼狽えている様子は見えない。
こんな時は女性の方が、よほど肝がすわっているのだろうか。

「可愛い赤ちゃんですね・・・
　男の子ですか？」

話をそらす様にベビーカーの中を覗き込んだ。

「ええ、そうです・・・・」

旦那様が嬉しそうに答えながら、赤ちゃんの頭を撫でている。

愛おしそうな眼は可愛がっている証拠だ。
赤ちゃんは手に持った「ガラガラ」を振り回している。