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ウンディーネの泉
第2章 マンション
 左腕を下にミユちゃんと向かい合う様に添い寝する。
 ものの10センチも離れてない。
 半開きになった唇から漏れる甘い寝息が鼻腔を擽る。
 夜中街灯に魅き寄せられる蛾のように俺の顔がミユちゃんに近付く。
 ミユちゃんの呼気を直に吸い込み。
 唇に感じる温かく柔らかい感触。
 幼女とのキス。
 唇が離れるまで時間にして僅か2、3秒。
 しかし脳内では分単位時間単位に引き伸ばされる。
 延々と続く至福の時間。
 「カズ兄ちゃん?」
 天空高く舞い上がっていた心が一瞬で凍り付き地表に叩き落とされる。
 ミユちゃんの目が開きじっと俺を見つめている。
 いったいいつから目覚めていたんだろう?
 「み、ミユちゃん起きたの?」
 我ながら白々しい台詞。
 声は上擦り月面宙返りしている。
 「カズ兄ちゃん、ミユにチューした?」
 お、終わった。
 「ご、ごめんなさい。あんまりミユちゃんが可愛かったからつい。」
 嘘ではない。嘘は言ってないが端から見れば見苦しい言い訳にしか聞こえないだろう。
 案の定床に座り直したミユちゃんの頬が怒りにプ~っと膨らむ。
 「恋人じゃないとチューしたら駄目なんだよ。」
 あれ?
 言葉に怒気が感じられない。
 上目遣いに俺を見る目は何かを期待しキラキラ潤み、頬は僅かに赤く上気している。
 「ミユちゃんが恋人になってくれたらキスしてもいいの?」
 甘ったるい恋愛小説や少女漫画の読みすぎた。
 羊羮を蜂蜜で煮溶かした様な台詞が自然に口から溢れる。
 室内に流れる重たい沈黙。
 時計の秒針の音が大きく響く。
 「・・・カズ兄ちゃんなら・・・・・・いいよ。」
 普段なら聞き逃しそうな小さな声。
 へ?
 なに?
 いい・・・よ?
 何が?
 恋人?
 キス?
 頭はグチャグチャに混乱していたが身体はこれ以上ない正しい行動をとる。
 半裸の背中に手を回し抱き寄せ唇を重ねる。
 5秒、10秒。息が苦しくなって一度離れるが再び重なる唇。
 舌を少し差し出しミユちゃんの唇をなぞる。
 「うぅ~ん。」
 擽ったかったのか驚いたのか。
 小さく身動ぎし呻くミユちゃんをしっかり抱き締めて背中を優しく撫でる。
 指先で背骨の凸凹を下から上へ撫で上げる。
 「ハアァ~ン。」
 ミユちゃんの顎が上がり口が開く。
 今だ!
 すかさず舌を伸ばし口蓋に侵入。
 
  
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