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ウンディーネの泉
第3章 映画館
 目が覚めたのは夜明け前だった。
 俺は手にしたパンツをどうするべきかなやんだがこのまま放置して黴を生やすのも洗濯してミユの体液を洗い流すのも嫌だったのでそのまはま乾燥機に放り込んだ。
 その間に湯船に温めの湯を張り身を浸す。
 ぬるま湯の温度が屋内プールでのミユを思い出させる。
 スラッとした脚。スリムな体躯。水面からプカリと浮き出たお尻。
 又会いたい。
 思い立ったら何とやらだ。
 昨日とほぼ同じ時間に水着を持って車に乗り込む。
 結果から言えば3時間程プールに居たがミユは来なかった。
 翌日も。
 その次の日も。
 ミユは来なかった。
 そして4日目。
 やはり今日も来ないのか。
 鬱憤晴らしに25mを2往復。100mを全力のクロールで泳ぐ。
 3回目のターン。ラスト25m。
 後10m、5m。
 ゴール!
 ブハァ!
 泳ぎきり水面から顔を上げると目に飛び込んできたのは二本のスラッとした脚。
 デジャヴ?
 いや、違う。
 「泳ぐの早いね。カズ兄ちゃん。」
 待ち焦がれ恋い焦がれたミユがあの日と同じ水着姿で座っていた。
 「ミユ!」
 俺の呼び掛けは盛大な水飛沫に掻き消される。
 頭から水を被った俺に温かく柔らかい物がぶつかってくる。
 四日前の感触が甦る。
 感無量で抱き締めかえそうとしてここが人目の有るプールだと思い出し頭を撫でるにとどめる。
 「クロール教えて。カズ兄ちゃん。」
 俺の胸板に顔を押し付けたままミユがせがむ。
 先日の事がなかったかの様な態度に戸惑いながらも俺に拒否権はなく言われるままに指導を始める。
 元々運動神経が良いのか物覚えが良いのか。
 前回矯正したフォームは綺麗に直りビート板を使えばたどたどしい息継ぎをしながらなんとか20m程泳げる様になるまで1時間も掛からなかった。
 「少し休憩しよう。」
 ミユを誘いプールサイドのベンチに並んで腰を下ろす。
 少し間を開けた方がいいかな?
 と思う間もなくミユの方からピタリと寄り添ってきて太股と太股が触れあう。
 ドキドキしながら持参のスポーツドリンクを手渡すとミユは喉をコクコク鳴らして飲み始める。
 嚥下する度に上下する喉元を見ながら覚悟を決める。
 「・・・こ、こないだは・・・ごめん。」
 消え入るような声だったがきちんと届いたのだろう。
 ミユの手が止まる。
  
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