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ウンディーネの泉
第6章 長内家
 夏休みが終わっても俺の家庭教師は続いていた。
 これはミユが熱望した事だった。
 月水金の週三日。二時間のお部屋デート。
 と、言ってもなにしろミユの家だ。
 勉強が終わる18時半には三穂が仕事から帰ってくる。
 とてもセックスする余裕などない。
 勉強そっちのけでパッコンパッコンなんてやれば成績が落ちて首になる。
 会えなくなるのは困るので勉強から手は抜けない。
 最初はウキウキしていたがすぐにこの現実に打ちのめされる。
 結局ミユとイチャラブ出来るのはプールに通う土曜日だけになってしまった。
 勉強ぐらい俺が全部教えるから不登校になればいいのに!
 我ながら危ない考えが過り頭を振る。
 今までが不自然だったのだ。
 兎に角週四日間も恋人と会える。
 顔を見ながら話が出来る。
 これを喜ぶ事にした。
 ミユはミユで欲求不満がたまって毎晩オナニーしているとキャラキャラ笑いながら教えてくれた。
 そんなこんなで秋の気配が漂う10月。
 明日からスポーツの日を交えた三連休という金曜日。
 10分ほど早く勉強を切り上げ三連休のどこかでデートしようと相談してると電話が鳴った。
 「ちょっと待っててね。」
 と言い置きパタパタ足音を残して階下に降りていく。
 「はい。長内です。あ、ママ?」
 開けっ放しのドアから話し声が漏れ聞こえる。
 電話相手は三穂のようだ。
 「えぇ~っ!ちょっと待ってよ!」
 ミユの声が一オクターブ跳ね上がる。
 「カズ兄ちゃん!」
 何事か?
 階段を駆け降りると困り顔で受話器を差し出される。
 ?
 「もしもし。十です。」
 『あ、十君?ごめんなさい。三穂です。』
 「どうした?」
 『実はね。』
 要約するとこうだ。
 いつも通り帰宅中電車が急停車。架線事故らしく全く動かないので線路を徒歩で移動中だが最寄り駅からは乗り換えが出来ないので帰宅が何時になるか判らない。
 『でね、悪いんだけどミユに適当にご飯だけ食べさせてから帰ってくれない?』
 あらあら。
 「女の子一人で留守ってのも物騒だし一緒に迎えに行こうか?」
 『本当?助かるわ。じゃあ、夕飯は私奢っちゃう。』
 電話を切ると声が聞こえていたのかミユはさっさと靴を履いてスタンバイしている。
 
 車を走らせ待ち合わせの駅に着くとターミナルは人で溢れていた。
 これで三穂を見つけられるのか?
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