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ウンディーネの泉
第1章 屋内プール
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 背中に温かい体温を感じる。
 突然の出来事に反応出来ずに四肢が硬直する。
 「カズ兄ちゃん、あっちまで泳いで。」
 ミユちゃんの呼気が耳朶を擽る。
 O.K.いいだろう。
 25mなんてクロールで本気を出せば十数秒の距離だが少しでもミユちゃんの体温を感じていたいのでわざとゆっくり平泳ぎで進む。
 どんなにゆっくり泳いでも楽しい時間は1分と続かない。
 25mを泳ぎきり昇降用の猿梯子の側に着くとミユちゃんは背中からあっさりと下り猿梯子を一段、一段と登りだす。
 水中から出てきた可愛いお尻と白い脚がなんとも扇情的だ。
 背中に「5-3長内」と書かれたゼッケン。
 やはり5年生ってことは10歳か。
 ミユちゃんに続いてプールから上がりバスタオルを置いておいたベンチに腰かける俺の前をミユちゃんは何も言わずに通り過ぎる。
 嗚呼、これまでか。
 別れがたいと思っていたのは俺だけか。
 思わず溜め息が漏れる。
 さ、シャワー浴びて帰ろう。
 腰を浮かせかけたがそれはトンという衝撃に阻止された。
 「ミユちゃん。」
 肩からバスタオルを羽織ったミユちゃんが其処に居た。
 濡れたままの肢体をピタリと寄せてくる。
 数分前まで感触を楽しんでいた太股が俺の武骨な脚に密着している。
 くそ!こんな事なら露出度の高いブーメランかなにかにするんだった。そうすれば直にミユちゃんの肌を堪能出来たのに。
 内心地団駄を踏みながら咄嗟に言葉が出ずに持参したペットボトルのスポーツドリンクをらっぱ飲みする。
 「カズ兄ちゃん、ミユにもちょうだい。」
 1/3程飲んだところで口を離すとミユちゃんがねだってくる。
 黙って飲みさしのペットボトルを差し出すとミユちゃんは何の躊躇もなく口を付ける。
 上を向いた喉がコクコクと小気味いい音を立てる。
 普通小学校高学年にもなれば性的な事に敏感になり異性との回し飲みなんか「間接キス」とか言って忌避しそうなものだがミユちゃんはお構い無しだ。
 無垢なのか、女としての計算なのか。
 俺には判断がつかないが、いずれであっても損はない。
 戻ってきたスポーツドリンクを二口飲む。
 さっきより甘く美味しくなったと思うのは気のせいだろう。
 「さて、これからどうする?」
 どうする?と訊きながらも選択肢は二つしかない。
 
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