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熱帯夜に溺れる
第6章 泳げない魚たち
 山の中腹に位置する上社の前で立ち止まる。
 純はこの道を歩き慣れているみたいだった。車でもナビを使わずに運転していたから、この場所へ来たことがあるようだ。

「莉子の夢の成功を祈らせて」

 彼は財布を取り出して賽銭の用意をする。莉子の分も合わせて賽銭箱に小銭を投げ入れた。
 ふたりで手を合わせて目を閉じる。

 莉子は神の存在をあまり信じない質だ。熱心な信仰心も持ち合わせていない。
 夢想家に見えて現実主義。案外ドライな一面を彼女は隠し持っている。

 だからこうして手を合わせていても神への願い事はひとつも浮かばない。せっかく純に連れて来てもらって悪いが、莉子は祈りを諦めてすぐに目を開けた。

 純はまだ目を閉じていた。手を合わせて彼は熱心に何かを祈り続けている。
 その横顔を盗み見て複雑な気持ちが湧き上がる。

(私の夢の成功を……と言っていたけれど、そんなに一生懸命、本当は何を祈っているの? 私のこれからの未来にあなたはいない。それなのにどうして?)

 存在も定かではない神に向けて、彼は何を祈っている?

 山を降りてもまだ15時過ぎ。のろのろと田舎道を進むと、山脈を背景にしてピンクとグリーンの奇抜な装飾の建物が見えてきた。

 外観はピンクを基調として、所々にグリーンのボーダーが入っている。お世辞にもセンスのいいデザインとは言えない。

 例えばこの場所が遊園地だとしたら、あの建物はアトラクションの一部に見えたかもしれない。莉子も子供の頃は、あの手の派手な外観の建物は実は王城で、綺麗なお姫様が住んでいると思い込んでいた。

 でもこんな変哲もない田舎道に忽然と現れた構造物が遊園地のアトラクションやましてや王城でもないことは、成人男女には自明である。
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