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熱帯夜に溺れる
第6章 泳げない魚たち
 駅前の再開発が進んでどれだけ街並みが変化しても、アルバイト先があの頃の面影をすっかり失くしても、竹倉純は何ひとつ変わっていなかった。

「無駄に年取って出世だけしてね」
「出世したの?」
「一応、4階フロアの部長」
「凄いっ! あれ? でも4階? 文具フロアの部長じゃないの?」

 私服姿の若い男性従業員が通用口を出てきたことで、純と莉子の会話は途切れた。純に挨拶をして去る彼がじろりと莉子を一瞥する。

(職場の前で立ち話は純さんに迷惑かけちゃうよね。さっきの人に変な誤解されたかな?)

 どちらともなく、そこから一歩を踏み出した莉子達は駅前の大通りを歩きながら会話を再開した。

「社員は人事異動があるから、他店にも他部署にも行かされるよ。莉子はまだ東京?」
「東京に住んでるよ。表参道のお店でネイリストしてる」
「表参道か。そんな都会で働いてるなんて凄いな。夢を叶えたんだね」

 純に褒められると無性に照れ臭い。ふたりの歩む先は真っ直ぐ駅に向かっているが、純はどういうつもりでいる?

「ねぇ、今から時間ある? 少し話がしたい」
「俺はいいけど……」
「明日も休みだから帰りが遅くなっても平気なの。お酒でも飲みながらお話しようよ。ダメ?」
「莉子のおねだりに俺が弱いってわかっていてやってるだろ?」

 笑って誘いを承諾する純を見て莉子は密かに安堵した。
 12年前、青陽堂を訪れた元カノの由貴を純は冷たくあしらっていた。今は由貴と同じ〈元カノ〉の立場となった莉子は、自分の誘いを純が断る可能性も多少は視野に入れていた。

 だけど純は莉子を拒絶しなかった。その事実に身勝手だと思いつつ嬉しさを感じている。
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